BEGINNING;
企画書の前段階で手描きする、ラフを描いたり、アイデアをメモしたりする今の時代に合ったモノを欲しいと思ったんだよね。
TRACK Co.,Ltd.代表・小泉邦明(TRACK Co.,Ltd.)
クリエイティブに携わる人の使いやすさを聞くと意見はバラバラでしたが、それをひとつコンセプトでくくれば面白いものになるなと思いました。
アートディレクター・谷川清和(TRACK Co.,Ltd.)
TRACK初のオリジナル商品として誕生した『TRACK DAILY SUPPLIE Vol.1 -PLAN BOOK-』。クリエイティブな環境でものを考え、整理して、形にしていく過程を自由に書き綴っては、次のページに行くもよし、切り離すもよし。そんな『PLAN BOOK』が生まれるきっかけ、制作過程、そしてこれからのTRACKプロダクトについてTRACK代表取締役・小泉邦明とアートディレクター・谷川清和が語ってくれた。
軸は自分たちが使いたい、
使いやすいものを制作すること。
谷川:スタートは小泉さんからでしたが。
小泉:元々はTRACK内でずっと使っていた原稿用紙だね。
谷川:設立して21年使い続けてきた原稿用紙でした。
小泉:昔は手書きで原稿を書いていたから。
谷川:写植や製版の指定も手書きでした。
小泉:でも、そろそろ在庫がなくなってきて、ふと「作り変えようかな」と。
谷川:それがこのプロジェクトのきっかけですね。
小泉:新しくするなら時代に合ったものにしようと思って。そう考えた時に企画書は横書きが多いから、その前段階で手描きするラフ用のものがいいんじゃないかなと。
だったら、A4サイズの横書きで方眼がいいんじゃないと谷川君に投げたんだよ。
谷川:投げられました。今回のPLAN BOOKを作るベースは小泉さんが考えた事だけど、自分たちも使いたいと思っているものや普段手に取って使いやすいと思えるものを制作していこうというのを軸に作り始めたんです。
小泉:僕は絶対にサイズはA4だろうと思っていて。企画書はA4横が当たり前のサイズだから。その下書きをする用紙であれば、同じサイズだよねと。でも、周りに聞くと、「A4は持ち歩くのに大きいのでは?」という意見が出て来て。じゃあ、A版でいくならA5サイズか。このぐらいなら持ち歩きやすいし、使いやすさも変わらないんじゃないかと。それから表紙をしっかり折り返せるように折り目を付けてほしい、というのが僕のオーダーだったよね。
谷川:そうでした。
この形になるまでパソコン内で膨大な試作が作られていきました。
谷川:形になるまでは、2カ月ぐらいかかったんですが。
小泉:昨年の10月ぐらいにスタートして、年明けには「こういうものができました」とお披露目する予定だったからね。
谷川:ただ、小泉さんがTRACKのブランディングも兼ねてみようかと言い始めて。
小泉:そうだ、そうだ。
谷川:TRACKが普段やっているクライアントワークですね。それ以外に活版印刷とか、TRACKがどんな事をやっている会社なのか、できる事は何か、オリジナリティを固めていくためのブランド開発をやっていこうと。
小泉:せっかくデザイン会社が作るプロダクトだからね。
谷川:そこで、クリエイティブに携わる者の目線でものづくりをしようというコンセプトで進めていったんです。
谷川:「作っていいよ」と言われたものの、僕はステーショナリーの開発をした事がなくて。最初は近しい人に「よかったら使ってみてください」とって感じで、ノベルティのデザインとしてスタートするつもりでした。
小泉:そのつもりだったよ。
谷川:でも、その後、商品として販売する話も出てきて、商品としての完成度と社名やブランドを打ち出すノベルティらしさを両立させるのが難しいと感じました。
それを整理するために、クリエイティブに携わる人間の使いやすさを理解しようとノートにまつわるヒアリングを始めたんです。
小泉:社内だけでなく、社外にも足を運んでね。
谷川:カメラマン、デザイナーなどが持ち歩いている色々なノートを見せてもらいました。方眼が多かったです。でも、僕は無地派ですけど。
小泉:そうだ。谷川君は無地が好きだったんだ。「無地がいい」って言ってきた。
谷川:僕は枠がない状態から物事を考えていくタイプなので。ただ、人によって全然違うんです。しかも、何となくではなく理由もあって。ヒアリングする手法を選んだ事で出てきた意見はバラバラでしたけど、ひとつの形に落とし込む作業は面白かったです。それらをひとつのコンセプトでくくれば、面白いものになるのかなと。
小泉:谷川君が預かっている時間は割と長かったよね?
谷川:最初はどうしてもわかりやすくTRACKという社名というか、ブランドが伝わるほうがいいんじゃないかと。ロディア、モレスキンといったどこの会社が作ったのかわかりやすいデザインも考えてみました。
小泉:その途中で、僕と何度かやり取りをして。
谷川:しましたね。そこで最終的に、このノートを使う人がアイデアを出す時に、邪魔にならない姿、使い勝手であること、使い手がニュートラルなテンションで向かえる物をプランブックの目指すところとしました。
手触りであったり、紙質であったり、色や見た目、サイズ感、素材も蛍光塗料を使用していない紙を選ぶなど、ニュートラルな外観もそこが軸になっています。
PLAN BOOKを完成させたからこそ、見えてきたアイデアもあります。
谷川:ネーミングはとても早い段階で小泉さんが決めていましたよね?
小泉:谷川君が方眼ではなく無地がいいと言っていたからそれは次の商品にと思っていたら、2つの名前が浮かんで。1つは方眼で企画書用にアイデアを整理するPLAN BOOK、もう1つの無地はデザインラフやサムネールを描くDESIGN BOOK。
谷川:最初から2冊を作ろうかという話もありましたよね。並べた時の事を意識した対になるデザインも考えたり。
小泉:でも、まずは1冊を固める事から進めようと。
谷川:PLAN BOOKなりの使い方を考えると、このデザインと形なのかなと思いますから。DESIGN BOOKは自由にラフやサムネールを描くとすれば、デザインも形も紙質も変わりそうな気がします。
小泉:似たような形態で違う役割は担えないからね。
谷川:PLAN BOOKを作っていく過程で、そうだなと気づきました。この1冊を作っていく間に色々な勉強が出来ましたね。そこからDESIGN BOOKにつながるアイデアも出て来ています。当たり前かもしれないですけど、実際に作ったからこそわかった事も多くて、これからの大きな財産になったと思います。
小泉:そう。作ってみないとわからないんだよ。
谷川:思っていた以上に面白いなと。
小泉:例えば、PLAN BOOKは1枚ずつミシン目が入っていて簡単に切り離す事が出来るけど、その目が粗い。ロディアはミシン目がもっと細かい。そういう事も作り上げたからこそ気づいた事だよね?
谷川:そうですね。どうでもいいかもしれないけど、破く時の音もミシン目で違ったり。
小泉:でも、実は大事なところなんだよね。作る前とか作っている時にはそこまでわからない。
谷川:一度作り上げた事で、僕はこのPLAN BOOKを後2〜3年は試行錯誤できると思います。
小泉:つまり、PLAN BOOKはこれからもリニューアルする可能性があるというわけだ。
PLAN BOOKから新たなものづくりの可能性が広がり始めています。
谷川:ただ、オリジナルのプロダクトをこれからどうしていくかも大事ですけど、「何を目的として始めているんですか?」となった場合、TRACKがものづくりに対して多様なアプローチをしているというのがコアな部分だと思っています。
小泉:そこを起点にこのプロジェクトは動いているからね。
谷川:そう考えると、PLAN BOOKの完成度だけをひたすら上げていく事が合っているのかと言われたら、もしかしたら全く違う事を始めるほうがいいのかもしれない。幅広く、より良い商品を作って販路を組み立てていく事が大事かもしれない。コンセプトさえズレなければ、色んな可能性が生まれてくるんですよね。
小泉:既にPLAN BOOKに続く商品の開発も始まっているからね。
谷川:TRACKにとっては、それぞれのクリエイターが持っているインスピレーションを落とし込める場がもうひとつ増えたのかなという感覚もあります。
小泉:そうなると嬉しいね。
TRACK DAILY SUPPLIES vol.1
PLAN BOOK
1,080円(税込・配送手数料別)
■サイズ
A5変形 148mm(タテ)×210mm(ヨコ)×13mm(厚さ) 80シート
■用紙
カバー(表面):サガンGAキャメル170kg カバー(裏面):サガンGAベージュ100kg 表裏2枚合紙 中紙:紀州上質紙70kg