- 野口:せきさんは本業でも映像を作ってるから、ちゃんと全体が見えるというか、どうしたらより良くなるかを考えてくれますよね。
- せき:私はまとめ役かな。野口さんは、普通では想像できないような画面をパッと作って、反応があってもなくても一人でずっと楽しそうにやってる。突っ走るタイプ。
- 野口:だから、「コレだ!」と思ったら、ずーっと深く入りこんでやっちゃうんだけど.....たまに止められる(笑)
- DJ Codomo:僕は概念的な方向に行き過ぎちゃう時がありますね。
ボリュームのつまみがあって、ずーっと音量が大きい方に回り続けるような絵が好きなんです。
機械的にも肉体的にも聞ける音量って限界があるけど、映像でボリュームのつまみが上がり続けることで概念的に音量を上げることができる。そんな感じに音楽とか目の前にある現実を拡張できた瞬間がすごく好きです。
だけど、そればっかりだとちょっと理解してもらえたりもらえなかったり(笑) - 野口:それは分かるんだけど、「もうちょっと画面を楽しく!」っていうのがせきさん。
- DJ Codomo:それぞれ好きな世界観があり、3つが混ざったり、お互いにちょっとやり過ぎだよって言ったり(笑)。それが3人のバランス。
別にリーダーとかもいないもんね。3人の意見が割れた時は、その時一番気持ちの強い人がリーダーかな。
- DJ Codomo:2004年頃、ビデオカメラは持っていたんですが、旅行中に自分の音楽用の素材を何となく撮ったりしていただけで、なにか形にしたいなと思いつつも映像作品などは作っていませんでした。
そんな時、レコードショップで流している音楽のCDジャケットをビデオカメラで店内モニターに映しているのを見て「あっ、これってこのままVJできるよな」と思い、実際やってみたのが始まりです。 - せき:うん、うん。
- DJ Codomo:初めてVJをやった時はビデオカメラ1台で、クリップライトをパチパチして明るさを変えたり、アルミホイルや紙、水、落書きなどを使って映像を作っていました。
機材もノウハウも無くて、ビデオカメラ1台で間が持たない時は、VHSのデッキとビデオスイッチャーを持ち込んで、試行錯誤したり。
最近のVJの機材といえばほぼコンピューターとコントローラーですが、当時はDVDやVHSを使ってる人がほとんどで、映画とか昔の映像作品をミックスするとか、PCでやる人はまだ少なかったと思います。
- 野口:(当時は)レアで面白い映像を膨大にコレクションしている人がいたし、実際にそのVHSを山のように積み上げて、そこから映像を繋げていくのをすげー!と思いながら見ていたよね。
- せき:それに機材や映像素材もなかったので、同じようなスタイルでVJをしようとは思わなくて。
- DJ Codomo:やりようが無かったよね。自分でやろうとしてもできないし、自分がやってもしょうがないっていうか。
それでも自分のスタイルでやり続けることは大事で。2014年が10周年だったんですけど、香港の という大きなフェスで、JazzyJeffや、PreservationのVJをさせてもらったり、去年の4月にはアメリカの でRyanHemsworthと一緒にステージに立てたり、嬉しいこともあったからね。
- DJ Codomo:僕らの場合、インスピレーションの元は素材です。
日本だと100円ショップやガラクタ屋、東急ハンズとかに行くと、結構コレ使えるなあとか。海外に行った時はスーパーマーケットの文房具コーナーが一番盛り上がる。あとはビンテージショップで絵はがきを買ったり、古本屋でゴルフの連続写真の本を見つけたり。
昔から家にそういう小物がいっぱいあって、何で自分がこういうのを集めていたのかわからなかったけど、結果的にVJに全部つながってきました。 - 野口:何年か前に、
の展示で、VJの技のレパートリーをまとめたんですよ。
3人で思い出したものを書き出してまとめたら100個ぐらいあったりましたね。 - せき:コレをやったら間違いないという鉄板の技もあれば、その時の偶然が重なってできたものもあって、忘れちゃったものもいっぱいあります。素材を映す角度を変えたり、同じ紙でももう一枚重ねてみるとか、付け足し付け足しでレパートリーが増えていきました。
- 野口:現場で音に合わせることでしか生まれないものなので、新しい技を作る練習はしたことがなくて。気に入った瞬間があると「あ、コレいいね、やり方覚えおこうね」と。
音楽でも経験と蓄積がないと良い即興演奏ってできないじゃないですか。 - DJ Codomo:即興でやるにはフレーズ(技)を溜め込んで行く事が必要だもんね。JAZZのインプロ(即興)と一緒で、完全にまっさらの状態ではじめるわけじゃなくて、フレーズがたくさんあって、それを組み合わせていくっていう感じにいつの間にかなっていました。
- 野口:だから、ライブで曲目が決まっている場合は曲をあらかじめ頂いて、この曲はアルミホイル、あの曲は水というようにイメージで技をなんとなく用意して流れを決めています。でも、その場でアレンジが変わって合わないこともあるじゃないですか。その時が即興の出番なんですよね。
- DJ Codomo:onnacodomoの活動をクライアントワークや仕事にしようという欲はそれほど無いんです。普段は3人それぞれの活動があって、VJや仕事の依頼が入ると集まる感じなので。
極端な話、VJではない映像作品に関しては、ちゃんとした撮影技術のある制作会社が作った方がきれいにできますしね(笑)。
最近では自分達でonnacodomoに飽きてしまう状態を避けながら活動しています。
だから、海外でVJができるのは本当に運がいいと思っていて、その都度、新鮮な気持ちに戻る事ができます。 - 野口:私達が得意なことは、時間をかけてきれいな映像を作り上げることじゃなくて、その場で、即興で、音楽に合わせて作ることなので、クライアントワークとなると、実は、まったく別ものなんです。
クライアントワークの場合は、まずonnacodomoのVJの手法や雰囲気をどれだけ活かせるかを考えますね。始めた頃はかなり原理主義で(笑)VJと同じ機材で、編集ナシで一発撮りができるものしか受けていませんでした。
そうすると当然やれる事がものすごく限定されて、自分たちが辛くなってくる。
どこまで自分たちのやり方を崩していったらよいのか、いつも悩んでいました。 - せき:VJをすることで生まれた”onnacodomoっぽい”っていう感覚をうまく仕事に取り入れるために、最近は、クライアントワークでは撮影して編集する、というやり方が多いです。がんばって、一発撮りの技術を身につけるよりも、その方が自分たちのまま仕事にできたので。
最近は、野口さんや私個人に来る仕事でも「onnacodomo風に」と注文を頂くことも多くて、個人の仕事の手法とonnacodomoの雰囲気を融合するケースも出てきたり、だんだん柔軟にはなってきたかも。 - DJ Codomo:仕事の時は手法と結果のバランスが難しいですね。できることと求められていることのギャップも出てきますし、そういった差を埋める作業が必要になるのがVJとの違いだと思います。
- 野口:やっぱりVJをたくさんやりたいです!
不定期の主催イベント「onnacodomo club」でも毎回面白い企画を考えています。
onnacodomoのインスタグラムでVJの瞬間を切り取ったようなコラージュ作品を投稿しているんですけど、それをまとめた紙ものも作りたいですね。
あとは、自分たちが楽しんで気楽に作れるような、ショート尺の映像作品を作ってみたいです。 - せき:うん、そういう映像作品を、なるべくたくさん作りたいなと思います。大事にひとつのものを作るというよりも、いろいろポンポン作ってみたい。
- DJ Codomo:僕も二人と同じでもっと作品を作っていきたいですね。
ミュージシャンのDJ Codomo、アニメーション作家のせきやすこ、イラストレーターの野口路加の3人による異色のVJユニット。コンピューターグラフィックスや、録画素材をいっさい使用せず、ビデオカメラの下で、水、キッチン用品、文房具、おもちゃ、印刷物など、日常にある様々なものを用い、リアルタイムに色鮮やかな映像をつくり出すライブパフォーマンスを展開。
2011年にフジロックフェスティバル、2015年にはアメリカのコーチェラフェスティバルに出演と海外でも活躍中。