Webデザイナー、ソニーのUIディレクター/デザイナーを経て、GoogleのUXデザイナーへ。アメリカ・サンフランシスコのITフロンティア最前線で仕事をするUXデザイナーとしての顔と、他ジャンルのアーティストと実験や創作を協業するkyndとしての顔を持つ米田研一。異なる立場がしなやかに共存する彼のデザインワークを紐解きました。
今、僕はUXデザイナーという肩書きですが、誰に向けて何を作るかによって考えることが大きく変わってきます。
製品やサービスであれば、実際に使うユーザのことを考え、何を感じるのか、何ができるのか、どのような操作でやりたいことを実現するのかといった、具体的な体験をデザインすることになります。
例えば、写真を撮ってシェアしたり、車を呼んで目的地にたどり着くといった行為がデザインの対象になりますね。
Androidのようなプラットフォームの場合は、製品を使うエンドユーザだけでなく、そのプラットフォームの上でアプリやサービスを開発する人もユーザです。いわゆるOSとしての機能に加えて、他のチームやサードパーティーがプロダクトを作り、エンドユーザに届けるためのツールもデザインするという感覚です。
SDK(ソフトウェア開発キット)などの実装や、マテリアルデザインのようなガイドラインを通じて、使う人が迷わないようにプラットフォームとしての一貫性を保ちつつ、個々のブランドやサービスが価値や世界観を表現できるようにする。そのためにも、それぞれの視点で具体的に考えて、プラットフォームとして何を提供すれば良いのかを抽象化してまとめていくことが大切だと僕は思っています。

ずきそうなところから手をつけるようにしています。
一度行き詰まるところまで考えると、「何が分かっていないのか」「本当にやるべきことは何か」など、いろいろなものが見えてくるからです。
「そもそも作っているものが正しいのか」と考えたり、行き詰まったら……、一旦手を離して他のことをやってみる。分かっていないことがあればそれについて考える。一度、その時点の限界まで考えたことついては感度が高まっているので、一見関係ないようなことや他の仕事からもつながりを発見したりヒントに気づきやすく
そういう意味でも、ロジカルに突き詰めていく部分と、感覚で追い込んでいく部分があって、その両方を必要とするところにこの仕事の魅力があると感じています。
考えるときはまず全体を眺めて、重要そうなところや、つまずきそうなところから手をつけるようにしています。
一度行き詰まるところまで考えると、「何が分かっていないのか」「本当にやるべきことは何か」など、いろいろなものが見えてくるからです。
「そもそも作っているものが正しいのか」と考えたり、行き詰まったら……、一旦手を離して他のことをやってみる。分かっていないことがあればそれについて考える。一度、その時点の限界まで考えたことついては感度が高まっているので、一見関係ないようなことや他の仕事からもつながりを発見したりヒントに気づきやすくなるんですよね。

kynd名義の個人活動は、ProcessingやopenFrameworksでの自由研究が始まりでした。
kyndという名前は、最初に取ったドメイン名がそのまま名前として残ってしまった形です。
この名義を最初に「カインド」と発音したのはアメリカ人の知り合いです。
それまでは僕自身も何と発音するのか考えたこともありませんでしたね(笑)。
最初は作ったものを、ただwebにあげているだけでしたが、当時openFrameworksの開発リーダーだったKyleがYCAMの開発者会議に呼んでくれたり、CreativeApplications.NetやWIREDなどのメディアで取り上げられたことで急につながりが広がっていきました。
コミュニケーションが非常に軽やかで、オンラインでちょっと話して、「よしやってみよう」といった感じで話が進んでいくことが多いです。
例えばThe book of shadersというシェーダー言語を学ぶためのサイトは、最初に著者のPatricio(Patricio Gonzalez Vivo)が始めて、僕が手伝っているだけだったのが、今では人も増え翻訳も7言語にまで広がりました。
みんな時間がある時にちょこちょこと作業をしているみたいです。
先日ニューヨークのSFPC(School for Poetic Computation)という学校で、新入生に向けたプレゼンをしたときも、創立者の一人Zach(※openFrameworks開発者の一人)から数日前にチャットで「ニューヨークにいるなら何か話してよ」という感じで(笑)。
一緒にライブを行ったり、MVを作ったりしているサウンドアーティストのsawakoさんも最初はオンラインだけでした。
もらった音源がよかったので映像をつけてみようと作ったのがnemumelとlocus of everyday lifeですが、MIAF(Melbourne International Animation Festival)などの映像祭からも声がかかって色々な場所で上映されました。
去年はVJ用のツールを作るという形で東京でのライブに参加したり、BRDGのイベントでVJをしたりもしました。
自分一人では浮かんでこない発想で取り組めるという意味で誰かと一緒に何かをつくるというのは楽しいです。
新しいことを学んでいくインプット作業として、どんどん違うことを試していくのが自分にとって大事なことですから。
米田 研一 Goole/UX デザイナー
武蔵野武術大学油絵学科卒。
ソニー/ソニーモバイルで携帯電話を中心としたUXデザインを担当。
2013年、Google入社。Android 5.0 LolipopからAndroid7.0 Nougatの初期段階までに携わる。
また、kyndとしてopenFrameworksなどコードを駆使した実験や創作も行う。