専門学校を出てから2年ほどデザイナーとして働いたのですが、向いていないと感じていました。デザイン設計、レイアウトが苦手でしたね。今でもラフは苦手です(笑)。
イラストを描き始めたのはデザイン事務所を辞めてからで、23~24歳の頃ですね。デザイナーは向いていないけど、何か作ってみたいと思って、イラストを描き始めたんです。子供の頃から絵が好きだったとか、絵の勉強をしたりした訳ではないので、リアルなものを描くのが苦手です。絵が下手なのはコンプレックスでした。
最初は文字をトレースしていたんです。デビッド・カーソンとか、文字をくずして書くタイポグラフィがすごく好きだったので。文字をトレースしながら線をどんどん追加して、その組み合わせが発展して絵になった感じですね。文字と人をトレースしてそこから顔を描いてみたり、色々なものを同時にトレースしたりと色々やってみました。半年くらいでだんだんタッチが変わっていきましたね。精密に描くのは大変なので、徐々に線を抜いていって…というのを繰り返し、それが今の形になっていったんだと思います。
初めてイラストのお仕事をいただいたのは、3年後くらいだったかな。知人の作家、原田マハさんから挿絵を描いてみないかとお声がけいただきまして、それが最初ですね。割と今のタッチに近い感じのイラストを描いたと思います。小説を読んでから描いたので、すんなりイメージできましたね。
「こういうものを描こう」と思って描けないんです。描く前に全体イメージが決められない。描いているうちにどんどん形になっていく、というスタイルです。描きながら全体のバランスを見て、ここに何か置こう、と決めていきます。ストーリー性のようなものがある訳ではなくて、周りを見渡して電話があったら電話を描いたりと、その場の瞬間瞬間を描いている感じです。配色についてもその場にある画材で、思いつくまま色をのせている感じですね。一度描いたものを後で修正する事は殆どありません。違うものになってしまう。
クライアントワークでは自分が描こうとしているものとクライアントが求めている物のギャップがあるので、本当に小さいカットでも毎回苦しみます。お仕事を続ける中で、自分のテイストというものができてからは、だんだんと自信がつくようになっていきましたね。今のタッチになってからは、「あ、自分はこういうのを描いていいんだ」と思えるようになりました。
一番印象に残っている仕事はYahoo!クリエイティブアドアワードのポスターですね。作家さんの決めたものはそのまま出す、というコンセプトでした。念のためラフを出したのですが、コレでいいのだろうかとすごく心配でした。私の場合は割と自由に作ってください、という依頼が多いので、ありがたいです。
お仕事は主にお知り合いの方からいただくので、WEBの仕事が多い印象なのはその業界に知人が多いからというのはあります。WEBの仕事で印象に残っているのはユニクロのDesigners Invitation Project のサイトですね。クリックするとあちこち動くのですが、そのパーツを全て描いています。今までで一番点数の多い仕事だったので大変でしたが、すごく評判が良かったと聞きまして、うれしかったですね。
FELISSIMO / CONTINEW LABO for 新九谷皿という企画で古い九谷焼の柄をリスペクトしつつ、新しいものを生み出そうというものに参加させていただき、私が描いたイラストをお皿として九谷焼の職人さんたちが焼き上げてくださいました。他にもWHYTOROPHYさんと一緒にリボンの勲章を作ったり、ブローチなどのアクセサリーを色々なアーティストさんと一緒に作っています。
Tシャツにイラストを入れる、というのはちょこちょこやらせていただいているのですが、テキスタイルはまだやったことがないので、今後やってみたいですね。
人と一緒に作るのが好きです。誰かの手が入って自分の作品が変わっていくっていうのが。イラストレーターだと、自分一人なのでつまらない。新しいもの毎に、ひとつひとつ違う世界観があって、自分では想像しないものが出来上がっていく…自分では絶対できないですよね。
なので、今後も色々な人と色々なことをやっていきたいです。