イラストレーターになったのは1999年。だから、今年で17年目になります。その間に、作風は時間の流れの中で変わってきた部分がありますね。本来は、もっと説明図寄りで描きたいと思っていたんですけど、描く人物に段々キャラクターが生まれて(笑)。
最初の設定ではアメリカで暮らす移民のようなイメージでした。プエルトリカンだったり、メキシカンだったり、日本人の血も入ってきたりして国籍のわからない変な人種になったんですけど、固定しないほうが面白いなと。
イラストレーターとして最初に依頼されたのは、ジャンクフードを集めた『マズくてウマいもの』特集だったと思います。子どものお菓子『ねるねるねるね』の大人版のようなものをグチャグチャ、グチャグチャ食べている人を描きましたね。「ウマい!」と言っているんだけど、目が死んでいるような人間で(笑)。
それからです、「こういう企画があるんだけど、こんな挿し絵は描けないかな?」と依頼が入り始めたのは。



キャラクターの難しいポーズは自分でやってみて、三脚を立てて撮ることがあります。そのキャラクターっぽい人に同じポーズをさせても、脇の開き方が甘かったり面白くならなくて。驚きの表情も写真の資料として探しても面白くないというか。イラストにする場合は、とにかく弾けているものを僕は欲しがるんです。それを頭の中でいろいろ組み合わせて、アウトプットする。
ただ、僕は基本的にどこかで見たことがあるなあと思える人を描きたいと思っています。
たとえば、昔ながらの床屋さんに掛かっている、色褪せたポスターの中でキメキメのポーズをしているモデルさんのような人とか。ポスターをつくった当時はお洒落だと思っていたものが、時間が経ち、紫外線をたっぷり受けたからこそ滲み出た雰囲気を持つキャラクターが僕の理想像です。
あるいは、メキシコの片田舎に貼られている男向け美容整形のフライヤーに描かれたビフォー・アフターの男の顔というのも好きですね。車を描くときも、いわゆる誰もが知っている名車よりウォルマートの端っこに乗り捨てられているちょっとダサい車を描きたくなります。



絵を描くことに興味を持ったのは、兄が美大に行ったのがデカかったですね。美大受験をしている姿が遊んでいるようにしか見えなくて(笑)。絵を描いて、バイクに乗って、また絵を描いて、酒を飲んで遊んでいる姿がきらびやかに見えたんでしょうね。「僕も美大に行く!」と東京造形大学に入学して、イラストレーターの湯村輝彦さんの事務所でアルバイトをすることになりました。
だからといって、イラストレーターになったわけではありません。当時の僕が目指していたのは、エディトリアル・デザイナーだったからです。
そんなある日、「illustratorで絵は描けるか?」と言われました。「描けなくはないと思います」と答えたら、「これを描いてくれ」と渡されたのが、『男の人が女の人の股に顔をうずめてパカパカされている』説明図。言われるままに描いてみると、「いや、黒人の太ももはもっと太いぞ。これはリル・キムという女性ラッパーだ。このぐらいの尻と太ももなんだ」と修正されながら描いたのが最初のイラストでした。
もちろん、今の作品と比べたらすっごくヘタなバージョンですけどね。



スランプになるのはしょっちゅうです。1日中、アイデアが浮かばないというよりも常にスランプの中にいる状態で描いている感覚です。
僕は前提として手で描けない。マウスを使えば描けるかもで始まっているので、色をいかにキレイに塗るかという部分がスコンと抜けているんです。その点、周りの人達はすごい。みなさん、カッコよくて、素敵で、上手いイラストを描くじゃないですか。
だから、常に飽きられるだろうなと思いながら、描いているところもあります。でも、最初の2、3年は調子に乗っていました。「あ、イラストの仕事が来る。やったあ」と思ってしまって(笑)。
でも、仕事が増えるに従って、周りが期待し過ぎていると感じたんですよね。それからは「違うんですよー、そんなに描けないんですよー」と心で叫び続ける毎日です。
本当に変な汗をかいて、締め切りに追いかけられてばかりですから。



たとえば、「CDジャケット、作れますか?」。経験がない仕事ですけど、せっかく来た仕事です。断ったらその道が閉ざされると思うので、僕は「できます」と答えてしまいます。でも、ちゃんとしたミュージシャンの方だと知って、変な汗が一気に噴き出たことがありました。それでも自分を奮い立たせて、何とか形にするのを繰り返しいたら、つくるモノの幅が広がっていましたね。
だから、「これからつくりたいモノは何ですか?」という質問が一番困ります。その場は適当に浮かんだものを答えていますが(笑)、経験として誰かに仕事として依頼されることのほうが面白いんですよ。CDジャケットやロゴもそうですし、自分がデザインを手がけた商品がコンビニに並んだこともあります。「そんなモノをつくらせてもらえるんですか?」と思うじゃないですか。
そういう発想はひとりで「何をつくろうか?」と考えても簡単には浮かんでこないものです。
そういう機会は大変ですけど楽しいので、これからも引っ張りたいと思います。そのために、僕ができることは自分の作品をもっと面白がってもらえるようにしていくしかないんですよね。


