PRIMART Jornal vol.9 ILLUSTRATOR, MOVIE DIRECTOR MINAMI KITAMURA
PRIMART Jornal vol.9 ILLUSTRATOR, MOVIE DIRECTOR MINAMI KITAMURA

INTERVIEW PRIMART JOURNAL #009

ILLUSTRATOR, MOVIE DIRECTOR MINAMI KITAMURA

SCROLL

INTERVIEW PRIMART JOURNAL #9 イラストレーター・映像作家・アニメーター 北村みなみ インタビュー

ソリッドなSF感覚と、紡ぎ出される浮遊感 宇宙世紀のガールズイラストが喚起する リアリティある“今”

1枚1枚どこかにUFOが映り込んでいる連作画集『UFO八景』のメタフォリックでコンセプチュアルな表現。ディレクター・映像作家として携わった『space shower TV ID【The great little journey】』の1カメで構成されたモーショングラフィックスの浮遊感とキレのある疾走感。イラストレーター・映像作家・アニメーターの北村みなみの仕事は、幾重にも重なるアイデアや構成・表現手法を引き算的に定着させたアウトプットで、不思議な浮遊感を生み出す。作品に描かれる女のコは、どこか懐かしくもあり今っぽさもあり、影もあればポジティブでもあり魅力的だ。静と動を横断しながら、常に今の気分を表現として模索する北村みなみの頭の中を覗かせてもらった。

SCROLL

01 『UFO八景』は富嶽三十六景からインスパイアされた宇宙世紀の浮世絵

連作の画集を考えていたときに、最初は私も気づかなかったんですが、タイトル文字とデザインを担当してくれたタイプデザイナー・グラフィックデザイナーの山田和寛さんが「これって浮世絵でしょ。富嶽三十六景のオマージュだよね」と。そこから掘り下げていったシリーズが『UFO八景』です。タイトルが地名になっているのも、富嶽三十六景からインスパイアされています。それぞれの場所は私の実家だったり、私が一度は住んだところだったり、旅行先もあります。自分が想像できる場所だったら作品にリアリティを与えて、観た人がそこで起きていることをイメージできるんじゃないかと、「東京都世田谷区砧集合住宅303号室」「東京都小平市チェーン飲食店店内」「静岡県沼津市井田地区」など細かなところまでタイトルにしています。
タイトル文字は山田さんと相談して、宇宙人が書いたような可読ギリギリのタイプフェイスで「宇宙文字」をテーマにつくりました。

UFOは背景の空に描いたものもありちますが、流れ星のようにUFOが飛んでいった軌跡だけだったり、部屋を照らす光がUFOから放射されていたり、UFOそのものを描いていない作品もあります。つまり、このシリーズは富士山を様々な視点から描いた富嶽三十六景のように、UFOをいろいろなライフスタイルの中で描いた宇宙世紀の浮世絵なんです。
ただ、いわゆるUFO自体は信じていないんです(笑)。
SFは小説も映画も大好きです。カッコいいなと思います。SFにはただの日常にはないソリッドな部分があるじゃないですか。『2001年宇宙の旅』とか凄くカッコよくて、キリッとしたソリッドなものを感じます。そういうところを自分の絵に1カ所でも入れたいと思いながら描いているところもありますね。

02 原点に戻って気づいた自分にとって気持ちいい表現

絵は小学生の頃から好きで、高校生のときには今のテイストに近い等身大の女のコを描いていました。そこで進学の時期に考えたのがデザインもできるイラストレーター。だから、美大に入ったんですが、デザインにあまり興味を持てませんでした。作っても何がいいのかわからなかったんです。そんなときに映像を作る機会に出合って、自分にとっての気持ちいい部分が直感的にわかりました。
20歳のときでしたね。そのとき、自分は映像のほうが楽しい、続けられるかもと思いました。

一方で、絵は大学に入ってから迷走が始まりました。当時活躍されていたイラストレーターさんの仕事の衝撃が大きくて、いろんなテイストを試していましたね。そういう絵を描く人がイラストレーターなんだと思ってしまったんです。
そんな迷走が長く続いて、高校時代からのテイストであれば絵の良し悪しが自分でもわかるなと気づきました。そこから徐々に作風が絞り込まれたのは3、4年前の話です。その間に商業的な映像作品を手がけるディレクターのアシスタントやエディターをしながら、自分の技術を少しずつ増やしていきました。この技術は自分の作品に使えるかもと思っていたところで、『space shower TV ID【The great little journey】』を作る機会を得て、これはイケるなと。振り返ると、自分が表現するものが作家性と結びつくまで長かったなあと思います。

03 ひとりで、何を考えているのかな?と思える女のコは魅力的

自分の絵に対する考え方は作風を絞り込みながら、少しずつ変わっていきましたね。最初は普通の女のコを描きながら、そうではない部分が描けるなと思ったら足していこうとしていました。でも、最近は意識的に普通ではない部分を描き込んでいます。
変わっていないのは、色の使い方ですね。よく使いがちなのは好きな水色ですが、色数を抑えてポイントの色を際立たせるのは、版画を相当意識していると自覚しています。昔から好きだった浮世絵も版画なので、版画っぽさというのが大好きなんでしょうね。
私の描く女のコはちょっと不安定感のある女のコが多いですが、何かしらにいじけているというか、ちょっとひねくれているというか、少しだけ落ち込みやすいというイメージを私は持っています。更に言えば、内にこもるタイプの女のコ達だと思います。最近は、そういう女のコがひとりでいる姿を好んで描いています。可愛く見えるというか、ひとりで何を考えているのかな?と思える女のコは魅力的に見えるんです。

04  気持ちいいと感じるのは、ワンカットのカメラワークの様な全てが連続した映像

映像を作り始めた頃に衝撃を受けた映像は、コーネリアス、オスカー・フィッシンガー、そしてザ・ビートルズ『イエロー・サブマリン』。共通するのは酩酊感というかドラッグ的な感覚です。私もそういう映像が作りたかったんですが、『space shower TV ID【The great little journey】』は近い1本になったんじゃないかと思います。女のコがヘッドフォンでいろんな国の音楽を聴いて、その場所に行った気になるという作りですから。
制作期間は2カ月弱だったと思います。絵コンテを描いたり、メインの絵を描き下ろすのが遅くて。じわじわ、じわじわ1カ月ぐらいはかかりましたね。でも、これでイケると思って作り始めてからは2週間程度で仕上がりました。。
全てのカットがどこかで繋がるようにシーンを展開するのは好きなんですよね。もちろん、バツバツとカット割りしたカッコいい映像をつくりたい気持ちもあります。でも、今は1カメラで最初から最後まで繋がっている映像が気持ちいいと思います。それが私の映像なのかなと。おかげで、『space shower TV ID【The great little journey】』は自分の作品といえるものが仕上がりました。

現在はイラストレーターと映像作家の仕事を同じ比率位でしています。時間的には映像のほうがどうしても比重が大きくなりますが、両方にいい作用があると私は思っています。これから先を考えると、『space shower TV ID【The great little journey】』のような30秒、あるいは10秒といった短い作品をもっと作りたいです。30秒位であれば、1秒1秒に力を入れて好きなことだけを詰め込めるからです。そうやって一つの世界をしっかりと構築していけたらと思っています。

WORKS

profile

MINAMI KITAMURA 北村 みなみ

愛知県名古屋市生まれ、静岡県戸田村出身。
多摩美術大学造形表現学科卒業後、フリーランスのイラストレーター・映像作家・アニメーターとして活躍の幅を広げている。
主な作品としては画集『UFO八景』、映像ディレクション作品『space shower TV ID【The great little journey】』、デザイナー山田和寛氏と制作したbrinqのMV『baby baby feat minan(lyrical school)』などがある。

  • OFFICIAL SITE http://www.kitamuraminami.com/
  • VIMEO https://vimeo.com/user5913605
  • STORE https://kitamuraminami.stores.jp/
INTERVIEW & WRITING
KOJI ARAIKAWA
PHOTOGRAPH
SHIN-ICHI YOKOYAMA
FRONT-END
QLOT.INC
EDIT, ART DIRECTION ,DESIGN
 TSUTOMU MARUSHIMA EDITOR'S NOTE
DESIGN
KASUMI SHIMADA

SHARE

  • FACEBOOK
  • Twitter